東京地方裁判所 昭和54年(ワ)1448号 判決
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【判旨】
一<証拠>によると、野間が代表者をしていたトヨタ鋼機が昭和五二年二月頃に倒産した後、野間は大日商店の代表者前田精寿からトヨタ鋼機の負債を整理し債務を代払いしてやるから本件建物の所有名義を移転するようにいわれてこれに応じることにした結果、同年一〇月一二日付で、野間から大日商店への同年三月二九日売買を原因とする本件建物の所有権移転登記がなされたこと、野間は、倒産後同年末頃まで本件建物から狭山市内の大日商店所有の建物に住居を移していたことが認められる。このように、大日商店がトヨタ鋼機又は野間に代つて債務の支払をすることを予定していた以上、右名義の移転が単に形式的なものであつたとは考え難く、大日商店に本件建物を譲渡してその対価をもつて負債を支払うことを目的としたか、又は証人野間良昭のいうところを信用して、売買ではないとしても、少なくとも譲渡担保とする趣旨で所有権を移転したものというべきである。そして、本件建物が借地上に存するものであり、本件建物の右大日商店への譲渡は建物の取毀しを予定していたものとは考えられないから、右譲渡は当然本件土地の賃借権の譲渡を含むものであつたと認めて妨げない。
二ところで、証人野間良昭は、大日商店は約束に反してなんら融資も実行せず、代払もしてくれないので、大日商店に対して名義の回復を求めていたと供述するが、具体的にどのような交渉をしたのかもはつきりしない上、<証拠>によれば、野間は昭和五三年二月当時までに大日商店に対して少なくとも二〇〇万円の債務を負担していたことが窺われ、右証人の供述部分はそのまま措信し難く、また右証人の供述によると、トヨタ鋼機は倒産当時五億円位の負債を残し、代表者であつた野間は昭和五二年一杯は大日商店の所有していた狭山市の建物に住居を移して債権者の追及を逃れていたほどで、名義移転が譲渡担保の目的であつたにしても、当時野間が大日商店への負債を弁済して本件建物の所有権を回復する可能性があつたとは認められない。以上によると野間の大日商店への本件建物と賃借権の譲渡は民法六一二条の解除原因に当たると認めてよく、背信行為に当らない特段の事情があるとの被告の主張も採用できない。
(上谷清)